小規模のこの国には、驚くほどコンパクトに観光地が密集しています。南部から来た観光客が最初にたどり着くのは、ホイアンでしょう。伝統的な素晴らしい建築物があり、その陽気な雰囲気とグルメが人気です。北部に足を伸ばすと、そこにはダナンがあり、バーやレストラン、洗練された新しい建築物が印象的となっています。都市の裕福さを前面にアピールしています。次に、かつてはグエン王朝の首都があったフエがあります。伝統的な王朝都市には宮殿の建築物や手入れが行き届いている中庭があり、まるで昔にタイムスリップしたかのようです。最後に非武装地帯(DMZ)として有名なベトナム戦争の跡地があります。現在物議を醸している北と南ベトナムを分割する場所がここにあります。

天候、料理、言語、さらには非武装地帯(DMZ)をまたぐベンハイ川の北側と南側の地域の特性の違いに気づくと思います。ベトナムはずっとこの地点で分けられていたわけではありません。最近は中国支配下の政治と文化の中心地域からドンコイの北側 ホアンソン山と、インド化されたチャンパ王国から南が国境でした。ベトナム独立国は17世紀に勢力を伸ばしたため、ベトナム軍は周辺にある国境に向けて南下しました。フエの近くにあるハイヴァン峠です。ここでもまたミーソン聖域での寺が制圧され王国が開かれた15世紀まで、チャム族が他国の侵攻を阻止していました。

それから、陳王朝と阮朝同士はこの同じ土地を巡り再び争い合ったのです。ライバル関係がついに爆発したのは19世紀にフエが国の都市になった時でした。阮朝はフエを帝国都市とし、そこに宮殿や寺、霊廟を建てたにも関わらず、戦争に苦闘しましたが、現在はベトナムの重要な観光地となっています。1954年にはベトナムは北緯17度線で分けられ、1975年の南北国境再統一までベンハイ川や非武装地帯(DMZ)がベトナムの国境となっていました。現在はあまり観光地としてオススメの場所ではありませんが、非武装地帯(DMZ)の荒れ果てた戦地は戦争で戦ったどちらの国軍兵士、また二国間の衝突で亡くなった市民にとっても辛い思いが残る記念碑となっています。

ダナン近くのチャイナビーチは、ベトナム戦争当時を思い出させる名前ですが、観光地はこれだけではありません。ホイアンの小さな川沿いの街は伝統色が強く、木造建築職人で活気に満ちたホイアンは特に素晴らしいのです。ホイアンから内陸側は他の地域へ向かう途中の町で、現在も巨大な建築計画が話題になっている最中、昔ながらのビーチが残っています。チャム族のスピリチュアル精神が活きるミーソン聖域は、草が生い茂る緑豊かな谷にあります。

この地域は北から南まで伝統的に天候が不安定で、一般的にはダナンやフエ周辺では9月から2月まで続く雨季には道路が分断されることも珍しくありません。フエは特に酷く、都市の年間降水量3メートルを考えると3月から8月までの乾季でも、豪雨に見舞われる日が数日あります。南部へ訪れるベストシーズンは2月から3月末の春で、気温と蒸し暑さが夏の最高記録(30度近く)に到達する前か、雨季直前の夏の終わりの時期でしょう。